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AOZORA PEOPLE紹介~都澤惠里雅さん(スキンケア製品と野菜)
- 2015/8/19
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「ヴァスパー」というブランド名でスキンケア製品の開発・販売と野菜の販売を手がけている都澤惠里雅(みやこざわ・えりか)さん。
今度は京都に引っ越して本格的に農業に取り組むという。
どうしてスキンケアから農業に行き着いたのか、これまでの道のりを聞いた。
転機は突然やって来た
「以前勤めていた会社を独立した頃、アトピー性皮膚炎を発症したんです。発症して初めて、アトピーの人でも使えるスキンケアがないことに気がつきました。自分が以前勤めていた外資系ブランドのスキンケアはもちろん、ありとあらゆるスキンケアを試したのですが、どれも使えないほど、敏感な肌になってしまったんです」。
あまりに予期せぬ事態で途方に暮れた都澤さんだったが、一筋の光明とも言うべき出会いが訪れた。
「あるイラン人の博士と出会い、アラビアゴムという成分を知りました。アラビアゴムの原液を水で薄めたものを紹介されたのですが、半信半疑で一番症状がひどかった首の部分に塗ったところ、肌に潤いが取り戻されるのを実感しました。びっくりして、博士が持っているだけ、買い取らせていただき、自分のカラダで1週間、試したところ、なんと、ほとんど完治したんです」。
食品にも使われる成分をスキンケアに
アラビアゴムはアフリカ・ナイル地方が原産の植物から採取した樹脂で、乳化剤などの用途で食品にも使われている。
「イランでは昔から馴染み深くて、喉が痛くなったら、飴にして舐めたり、髪が薄くなったら、タマゴと混ぜて塗ったり、肌が荒れたら、水に溶かして塗ったりしているそうです。この成分について、博士は東大農学部で研究をされており、何かに使えないかということで、商品開発に携わる人に紹介していたところでした。
私は慌てて、博士の元に行き、アラビアゴムを化粧品の成分として使えないか交渉し、承諾のもとアラビアゴムを主成分にしたスキンケアを作ることに。成分内容などは私が全て考えました。
アラビアゴムやダマスクローズウォーターなど、原料は全てその植物が元来生まれ育った場所で育てられたものだけを使用しています」。
こうして都澤さんが試行錯誤を重ねた末に製造販売を始めたオーガニックスキンケア「ヴァスパー」は、数々のメディアでも紹介され、肌の悩みを持つ多くの女性たちから好評を得ている。
「食」の見直し
仕事が順調に進む一方、私生活では伴侶に恵まれ「妊活」を始めた都澤さん。今度は食生活の見直しにかかった。
「スキンケアと同様で、調味料から食器洗いの洗剤に至るまで、健康のために不要な成分を排除するようになりました。でも最後まで見つけるのに苦労したのが野菜です。自分の基準に適う野菜がなかなか見つからなくて、あちこちの農家さんの情報を探しました」。
都澤さんが見つけたのは、関西以西で肥料・農薬を一切使わない自然栽培で野菜を育てている農家の方々。
いずれも都澤さんが訪ねて直に話を聞き、お互いに信頼関係を築けた方ばかりで、仕入れた野菜は自身のサイトで販売している。
「自然栽培の野菜は生命力があふれていて、味がしっかりしています。熱い想いを持っている農家の方ばかりですので、お会いする度に勉強になります」と都澤さん。
販売量も少しずつ伸び、すでに契約している農家から同じ志を持つ農家を紹介されるという好循環が生まれているのだとか。
「農」への挑戦
農家から野菜を仕入れるだけでなく自らも農業に取り組みたい――それが、京都に引っ越すきっかけとなった。
「いつか、オール・メイド・イン・ジャパンのスキンケアを作りたいという想いもあり、農業を始める決意をしました」。
そのために選んだ地が、京都駅から車でおよそ60キロ北西にある京丹波町。
<どこで誰がどのようにして作ってくださったかが明確なものだけで生活ができる>というのが、京丹波を選んだ理由。「農」への挑戦は始まったばかりだが、農家と直に交流する機会が増え、農業に対する想いはさらに強まるばかりだ。自社で扱う農産物も野菜だけでなく平飼いの卵を扱うようになるなど、品揃えがますます充実している。
「わたし自身と家族の幸せ」から始めよう
これまで、スキンケアも農産物も自身が心から良いと思えるものだけを商品として提供してきた都澤さん。農業に取り組む上での目標は<安心して口にできるものをコンビニよりも安く>だそうだ。
「どうしても質のいい野菜は値段が高いというイメージがつきまとうので、それを払拭したいと思っています。かといって自分たちにできることは限られていて、そんなに多くの人に野菜を分けることはできないけれど、それでも自分の身の回りの人には幸せになってほしい。そんな気持ちでいます」。
そう語る都澤さんの手がける野菜を食べてみたい、という方は、ぜひウェブサイトをのぞいてほしい。(構成/中村謙太郎)